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1.ロケーション

 

  喜望峰からさらに南、アフリカ最南端の地、アグラス岬。ザ・ベリオのワイナリーは、そこから100kmほど離れたエリムという小さな町の一角にあります。

 1824年にドイツ系の宣教師達が入植して以来、その土質と冷涼な気候は、時にキリスト教の聖餐にも供されるワイン作りに適していることが知られていました。

 エリムではその宣教師達が始めたミッションスクールでの教育水準が高かったために、付近の農民たちはこぞって息子や娘たちをその学校に入学させまし た。結果として学校には多様な人種の子供たちが集まって異なる文化の交流が深まったために、南アフリカでは非常に珍しいことに、アパルトヘイト(人種差別 政策)時代でもエリムでは黒人や白人の別を問わず良好な社会的関係が築かれていました。

 この調和の精神は、現在のエリムにおいてもコミュニティの基盤に なっています。

 

2.生産者

 

 ベリオのワイナリーはそのエリムを舞台に、ある2人を役者として始まりました。後にオーナーとなるフランシス・プラット(写真)と、フラッグストーン・ワイナリーでのワイン作りに従事していた、ブルース・ジャックです。

 ブルースとフランシスは幼少期の殆どを、アグラス岬に程近いアーニストンと呼ばれる場所で過ごしました。青く澄んだ海、涼しい夏、果てしなく続く青空、暖かい白砂の海岸、新鮮な魚介類、そしてサーフィン。そんな環境の中で、五感が研ぎ澄まされる毎日だったことでしょう。

 成人するとプラットはエリムで農場経営を始め、ブルースはワインの知見を広めるためにフランス、カリフォルニア、オーストラリアなどを旅しました。彼がオーストラリアのアデレード大学で醸造学を学んでいる間に、プラットはブドウ栽培を考え始めていました。

 ブルースが卒業論文-ダーリン(西ケープ州のワイン産地のひとつ)とエリムにおけるワイン作りの可能性-を書き終えて故郷に戻ってきた後、二人は一緒にラグビーを観戦し、ブラーイ(バーベキュー)でラムチョップや伊勢エビを焼いて楽しんだところで、エリムの地で自分たちの理想(後のフィロソフィの項 もご覧ください!)のワイン造りを夢見るようになりました。

 彼らはその後7年にわたり、フラッグストーンのブランド向けにソーヴィニョン・ブランとカベルネ・ソーヴィニョンのブドウを供給し、それが「こんな芳醇なソーヴィニョン・ブランは世界でもめったに見られない!」と何人かのワイン批評家達に注目されるようになりました。ブルースとプラットは、エリムの冷涼な気候と潮風が、特にソーヴィニョン・ブランの生産に最適であることを証明したのです。

 2008年にフラッグストーンブランドでの供給が終わり、ベリオはブドウだけでなく、ワインそのものの生産者になりました。その2008年のヴィンテージ、「ソーヴィニョン・ブラン」と「ウェザーガール」は、瞬く間に飲む人を虜にしていきました。「エリムこそが世界のソーヴィニョン・ブランの首都であるべきだ!」と。

フランシスはこう言います。「ベリオのワインにはいつもブルースの思いがこめられているんだ」と。「僕らは幼馴染みだ。これからもずっと仲良く、一緒にラグビーを見て、ブラーイでラムチョップと伊勢エビを焼きながら、ベリオのワインに懸ける情熱を共に語り合うんだろうな」 

3.生産者の理念

 

 インド洋と大西洋がぶつかり、年中厳しい潮風が吹きすさぶエリムの地でブドウを作ること、しかもそれを商業ベースで軌道に乗せることは、決して簡単 なことではありません。しかし、そこにはワイン生産者の本能に「ここでワインを造るべきだ」と感じさせる、不思議な魅力がある様です。

 ベリオのワインには、「生産者の私たちが愛するのと同じくらい土地に愛された」ブドウの風味が持つ不思議な魅力を、飲む人に伝えられるための愛情と努力が惜しみなく注ぎ込まれます。

 栽培者たちはブドウの木の根たちに土や頁岩、石灰岩、粘土などの暗くて冷たい感覚を吸い上げるように言い聞かせ、ブドウの葉には震えてその土地から の「エネルギー」をくみ上げよと諭します。そのエネルギーには土の中の有機物が生み出すものに加えて、根の周辺で起こっている何百万もの化学反応も含まれ ます。

 それだけではありません。ベリオの土には数百万年にわたって続いてきたその土地の歴史がこもっていると考えられています。この土の歴史が持つスピリット(魂)は、生産者からの最大限の賞賛と共にブドウの木を通してワインに込められていきます。

ブドウのそれぞれの実が熟す時には、太陽の光の記憶や、地球の自転や、時に思い起こされる水の潤いや、土地に住まうものたちの息吹であり、そしてそれら全てが限りなく続くサイクルを切り抜いたものが凝縮されて力強さを持つとみなされます。

 このような考え方に基づき、ベリオのワインは土地の持つミステリアスな魅力を飲み手に伝えるべく、自然界への介入という形で繰り返してきた生産者の試行錯誤を織り交ぜて作られます。

 地理的特徴と歴史の一致がもたらした神秘的で魅力的な土地で、ベリオのスタッフたちが情熱を込めて作ったワインがお届けする、「世界の片隅」の風味をぜひお楽しみ下さい。 

The Berrio(ザ・ベリオ)

 

アフリカ最南端のアグラス岬に程近く、年中冷たい潮風が吹き付けるエリムという地区で高品質の白ワインを産み出すワイナリー。

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